目次
ディフェンス|サッカーのディフェンス(守備)戦術とは?
サッカーのディフェンス戦術には大きく分けて「チーム戦術」と「個人戦術」という2つの戦術があります。
一般的に戦術と表現する場合チーム戦術を指すことになります。またチーム戦術はチームとしての決まりごとと言い換えることも出来ます。
チーム戦術では「相手のゴールキックからのビルドアップに対してどのような形でどこでボールを奪うのか」というようにシチュエーションごとに予めやる事を決めておきます。
チーム戦術|ゴールキックからのビルドアップの対応【例】
【機会をつくる】フォワード、ミッドフィルダー、がチェイスしキーパーまでボールを戻させロングボールを蹴らせる。
→【強みを活かす】こちらにロングボールの対応力が高いディフェンダーがいる。
→【脅威への対応】ディフェンダーはヘディングでセカンドボールを狙う相手の背後までボールを飛ばす。
→バイタルで味方がボールを回収する。
このように自分達の強みで闘える状況を生み出すことでゲームを有利に進めることが出来るようになります。
しかし、逆にディフェンダーのスピードが【弱み】になるような場合、キーパーに足元の技術で外されて、ボランチ→トップ下とつながれバイタルを取られるようなことになれば途端にピンチになります。こちらは相手チームの攻撃面でのチーム戦術になると思います。尚、この、強み、弱み、機会、脅威、で分析する方法はSWOT(スウォット)分析と言います。
もちろんサッカーのゲームでは全てのチーム戦術が上手く機能するわけではありません。
チームからのオーダーに個人がどれくらい答えられるのか、戦術が狙い通り機能しない場合個人がどのように対応するのか、この個人の対応力が個人戦術でよく個の力と言われる部分になります。
ディフェンス|個人戦術とは?
ディフェンスの「個人戦術とはその場面で何を目的にどのようなプレイをするのか」ということです。言い換えれば目の前で発生した問題に気付き、その問題をどのように解決するのか?といことです。
- 場面は、トランジション後の数的優位、数的劣位や相手のスピードなどの状況、それによる陣形の乱れスペースの有無などの結果、ゴールとの距離(3ゾーン)、ゴールとの位置関係(5レーン)などの場所、と対応が迫られる場面によっていろいろな判断材料が出てきます。
- 目的は、ボールを奪うべきか、ディレイ(時間をつくる)すべきか、リトリート(ポジションに着く)すべきか、など【場面】によってそのディフェンス対応が変わってきます。
- プレイは、積極的な1対1のディフェンス対応、インターセプトやスタンディングタックルなどのチャレンジ、ディレイをしながら1対1のディフェンス対応に移行する、リトリートしてからチャレンジする、など【目的】によって変わってきます。ここでのプレイは、チャンスがあれば積極的に【ボールを奪う】プレイを優先することになります。
ディフェンスのチーム戦術は、この個人戦術の制度が高ければ高いほど機能し、多くのポジティブトランジションを生み出すことに繋がります。
サッカーの原理原則(4局面)は「攻撃」→「失う」→「守備」→「奪う」のサイクルです。
「ボールを奪う」の次にくる局面は「攻撃」で、サッカーはより多くの得点を取ったチームが勝利する勝敗を決めるスポーツです。
サッカーの目的「勝敗」サッカーの構造【サッカーの原理原則(4局面)】から見てもディフェンスがとても重要なプレイであることが分かると思います。
さて、普段ディフェンストレーニングにどれくらいの時間を使っていますか?
ディフェンスの学習|【守破離】の【守】
ディフェンスのプレイで必要となるのは「球際」「1対1」「チャレンジ」の3つのテクニックです。
この3つを身に付ければ後は自分の力でディフェンス対応することができると思います。
ディフェンステクニックは【守破離】の【守】を学習し、あとは自分の力で【破・離】と磨くイメージです。(これは攻撃も同じです)
3つのディフェンステクニック【守】の部分は【学習】しなければなりません。学習とは他人から学ぶことです。
これらのテクニックは自然に身につくものではなく、自分で体感するか、指導者にポイントを教えてもらわなければ獲得が難しいと思います。
ポイントが分かっていないと結局は身体能力頼みになってしまいます。自分で【破・離】とディフェンステクニックを磨くためには身に付けるべきポイントが存在するのです。
ディフェンス|球際の【守】
これは相手との距離が【両手で触れる】くらいまで近くボディーコンタクトが可能な状況です。
相手、自分とも動きは止まっていて体の向きは同じ方向となります。身に付けたいテクニックとしては【腕の使い方】【腰を入れる】の2つです。
この他、相手がライン際などで後ろを向いてボールキープをしているような状況では【股の間】を狙うこともあります。
「相手が止まっている」の部分は応用が利きます。例えば、相手が時速5キロ、自分も時速5キロで動いているのであれば止まっている時と同じように【球際】のテクニックでボールを奪うことができます。
ディフェンス|1対1の【守】
これは「球際」よりも距離がある状況で相手と向き合っています。距離は片手を伸ばして触れる程度になると思います。
相手と自分は止まっている状況で「球際」のディフェンスに持ち込むためのテクニックが必要です。多くの場合は【利き足を規制する】【ライン際に追い込む】ことで「球際」に持ち込みます。
ここで身に付けたいのは【規制】のテクニックです。ワンサイドカットなどと言われることもありますが【規制をかけるタイミング】と【距離と角度】がポイントになります。相手が止まっていない状況では【ドジング(正対)】することでスピードを合わせ規制をかけます。
ジダンのマルセイユルーレットのカラクリとは?
ジダンが選手時代に良くやっていたテクニックに「マルセイユルーレット」というものがあります。
マルセイユルーレットとは「相手に近い足でボールを引きさらに逆足でボールを引くことで相手に背を向けてターンするテクニック」です。なぜ、このテクニックが有効に働くのか考えてみましょう!
ここには「1対1」のディフェンステクニック【規制】が影響しています。
規制は利き足に掛けますが理由は相手に「アウトサイド」使わせたくないからです。
アウトサイドでボールを触れる状況は「キックが出来る」「パスコースがある」「パスコースが生まれる」状況を指します。ディフェンスは1対1に持ち込むために「アウトサイド」を使わせないよう規制を掛けていきます。
インサイドしか使えないのであればチームとして次のパスコースを予測し限定することが出来ます。
しかし「マルセイユルーレット」ではインサイド側からアウトサイド側へボールを移されてしまうわけです。
この時点でファーストディフェンスは剥がされ、セカンドディフェンスが対応を迫られることになります。
ここでカオスが発生するわけです。同じようなテクニックに「ダブルタッチ」があります。これもインサイド側からアウトサイド側へボールを移すことが出来るテクニックです。また規制されている側へスペースをつくることが出来るテクニックです。
しかし、これは1対1のディフェンステクニック【規制】を掛けた相手だから必要性があり有効となるテクニックなのです。
ディフェンス側が規制を掛ける前であれば【ドジング】の要領で【球際】にもって行かれてしまうと思います。
ディフェンス能力が高い相手がいないとオフェンス力を伸ばす機会もなくなってしまうことになります。恐らく小学生は高校生を抜くことが出来ないと思いますが、ドリブルで相手を抜くテクニックはこれを実現できるぐらいのレベルを指すと思います。
ディフェンス|チャレンジの【守】
これは「インターセプト」や「スタンディングタックル」のように自分が動いてボールを奪うテクニックです。
多くの場合はマークする相手にボールが出る瞬間判断しボールを奪います。
このテクニックで大切になるのは【ポジション(修正)】と【読み】です。相手がトラップをした瞬間にコースを読んで【体の向きやポジションを修正】しパスを出した瞬間に飛び出します。テクニック以外にも集中力、体力、瞬発力など身体的な能力も必要です。
ディフェンス練習|【守破離】の【破】
ここのまではボールを奪うテクニックの【学習】です。
ここからは「球際」「1対1」「チャレンジ」のテクニックを活かしボールを狙いながらゴールを守ります。
この【ゴールを守る】要素がディフェンステクニックを個人戦術に昇華させることに繋がっていきます。
上で説明したように【場面】から【目的】を考え【プレイ】することでディフェンステクニックは個人戦術になっていきます。
もちろん判断を下すのは自分自身でプレイするのも自分自身です。そのため、ここからは指導者に教えてもらうのではなく自分で切り開いていく必要があります。
目に見えるテクニックをいくらトレーニングしてもサッカーは上手くなりません。
トレーニングで必要となるのは、目の前の問題を解決する力、です。これはゲームでしか養うことが出来ません。
サッカーに自立や主体性が必要になるのは、攻守ともにサッカーのプレイの本質が個人戦術にあるからです。
ヨーロッパの子供達は球際が激しくディフェンスが上手いです。
審判も日本と異なり多少のファールでは笛を吹かないそうです。このようにディフェンスをトレーニングで学習しゲームの中で練習した子供達はディフェンスの個人戦術を身に付けていきます。これを実現するため必要となるのが「勝敗」です。
そして、このディフェンスに対して攻撃を仕掛けます。
そこには勝つために創意工夫があるはずです。
下の世代で世界の上位にいる日本代表。しかしA代表では上に上がれない。その理由このディフェンスから見える学習の仕組みにあるかもしれません。
この記事へのコメントはありません。